Vol.5 熊本県 在宅ステーション水前寺 相馬真凛さん
ヘルパーの仕事をするにあたって
私がヘルパーになりたいと思ったきっかけは、ヘルパーにお世話になっていた祖母が亡くなった後、祖母の部屋に残っていたヘルパーさんとの連絡ノートを見たことです。体のきつさや不安な気持ちと闘っていた祖母にヘルパーさんが優しく寄り添ってくださっていたんだなと思いました。そして、私も在宅で最期まで過ごすために頑張るお年寄りと家族の気持ちに寄り添い、一緒に喜んだり考えたりする仕事がしたいと思ったのです。祖母が生前お世話になっていた事業所でヘルパーの仕事をしたいと考えた私は、今働いている事業所の門を叩いたのでした。
私がやりがいを感じた出来事は、百歳の利用者さんが亡くなられる少し前に、最期の食事介助をさせて頂いたことです。ご家族から「もう今日は呼びかけにも反応が無いから全く食べないかもしれないです。」と言われました。いつもは様々な料理が並ぶテーブルにはお茶碗に半分くらいの玉子粥だけが出されており、「今日はお茶だけでも飲んでいただけたら」と思っていました。しかし、ご本人に「今日は卵の入ったお粥ですよ。美味しそうな匂いがしますよ」とお声がけをしてスプーンを口元に運ぶと小さく口を開けて食べて下さいました。そして一口、また一口とゆっくりゆっくり味わうように噛みしめながらほんのスプーン一杯分だけ残して召し上がったのです。それには私もご家族もびっくりしました。「卵がお好きですもんね。美味しかったですか?」とお声がけすると、少しだけ目を開けて、かすかな声で「はい。」とおっしゃったのです。ご家族も「すごいね。目が開いたね。」と本当に嬉しそうにおっしゃっていて、とても温かい気持ちになりました。これが最期のサービスになってしまいましたが、「食べてもらわなければ」という気持ちばかりで食事介助をするのではなく、温かい雰囲気を作って、たとえほんの一口、二口しか食べられなくても、心が元気になったり笑顔になる時間にすることも大切だと学びました。
ヘルパーになって、利用者さん方との出逢いの中で沢山のことに気付かせて頂き、生きるということはどんなことか、日々考えるようになりました。「いつかは自分も年をとって命の終わりを迎える日が来るのだから、毎日感謝の気持ちを持って、悔いなく幕引きができる人生を送れるように、大切に今日も生きよう」、そんなことを考える自分に成長できたこの仕事を、これからも一生懸命続けていきたいです。